勉の勉強 (アイロンパーマ編)

先輩が無言で 勉君に目で合図する。

「近くに来い、俺(先輩)がやっている仕事を見ろ」と言わんばかりに あごも使い彼を呼んだ。

今、先輩が行なっている技術はアイパー(アイロンパーマ)で、理容の技術の中では難しい部類だ。

アイパーの 掛けているところを見せようと、やさしさからか自慢なのか 勉を(上記ように)呼んだ。

「ジュー・ジッジュウー プチプチ」と音を立て 髪をコテで挟み、根元を曲げていく、煙も「モワッ」と立ちのぼりる。

手元を見ていると、さすがに先輩は「すごい」と思う。

ただ、お客さんは 時々「アッチーッ」と叫んでいたが。

勉は「自分では出来ないが コテが 地肌に着きそうだ」などと思っていた。
(コテを地肌に着けたら確実にやけどします。)

そんな風に感心しながら 先輩の技術を見入る勉君を見て、先輩も悪い気はしない 満足げであった。

後で、コテの使い方を講釈する先輩、真剣に聞く勉君。

すごく勉強になった感じがして いい先輩だとおもっていた。

ところが、その2日後。

突然、勢い良く店のドアが開き、「いらしゃ・・・・」みんな 声を飲み込む。

いきなり入って来たのは、「2日前に アイパーをかけた やくざ風のお客様だ」

ただならぬ雰囲気が漂っているのを一瞬で判断した。

お客は、店内の従業員をぐるりと見回していた、眼光鋭い。

(そのお客さんにアイパーをかけた)先輩は、心なしか目線を外しているような感じで、「いらっしゃいませー」

そのお客さんは先輩を確認すると、つかつかと近づき

「オイ この頭見ろ どーしてくれるんだよ」。

偶然 その時も先輩はアイパーを掛けていた、椅子に座ってアイパーを掛けられているお客さんもたまったもんじゃない、帽子を取ったやくざ風の人の頭を見ても笑えない。

怒って入ってきたやくざ風の人の剣幕に押され、鏡越しに成り行きを見ていた。

無論みんなの目は そのお客さんの頭を確認、「あれは、たいへんだ」口には出していないが みんな一瞬 凍り付いた。

所々毛がない 円形脱毛でも ここまで成らない まだらにハゲている。

いいところを見せようと、早く出来るように コテの温度を上げていたのが原因だ。

要するに コテの熱が高すぎて 施実中に毛を焦がしてしまい、後日 焦げた所から毛髪が切れたのだ。

地肌に近い所から切れているし、切れていない所もある、穴だらけの ま だ らハゲだ。

お客さんにしてみたら 大変な事だ、もの凄い勢いで怒っている、あたり前だと思うが・・・・

これを直す場合「まるボーズ」しかない、・・・結局「まるボーズ」にして お金を返していた。

先輩が小さくなっているのを感じていた、勉君「教訓になった、あんな掛け方は良くないのだな」と、反面教師だった。

当然だが先輩として立つ瀬がないのだろう、かなりしょげていた。

いきなりボーズになったお客さんもたいへんな思いをしているだろう、会社に行くと冷やかされるのは間違いない。


床屋がチョッとネタ