勉くんの部屋


勉君は青森生れで、寒いのは なれている、都会に出てきて 理容を目指し頑張っているが、与えられた部屋が 蒸し暑いのには閉口する。

一階の角部屋だが、二ヶ所ある窓は、隣の家の壁に手が届く、いたって風邪通しが悪く、日も差さないが 暑いあつい。

元々この部屋は 物置代わりに使用していた所で、急きょ住み込みの 従業員用に変更しただけで、勉の物ではない箪笥(たんす)が 二竿(フタサオ・箪笥の数)そのまま置いてある。

そんな悪い環境でも、理容師見習いの場合 我慢しなければならない、アパートを借りる程の給料は頂けない。

現在では、最低賃金が決まっているが、昔は、一ヶ月働いても小遣い位にしかならない、昔の考え方では、仕事を教えてもらい、給料を貰えるのだから あたり前だった。

現在、理容師になる場合、学校にはすぐは入れるが、理容店を探すのが難しい。

小規模の理容店では、たとえ最低賃金といえ、理容師見習いの場合は 売上に直接結びつかないので、 簡単には雇えないのが現状でしょう。

前置きが長くなりましたが、勉の住んでいる環境がお判りいただけたでしょう。

夏の蒸し暑い夜は、たとえ風が入って来ない窓でも 気分で全開にしておく。

風は入って来ない代わりに、虫が入ってくる、蚊取り線香を焚き 虫対策をしているつもりでも、蚊取り線香の 意味無い虫もいる。

代表格はゴキブリ、勉君も 部屋を絶えず奇麗に 掃除をしている訳ではない、食べかすも落ちている。

熱帯夜に苦しめられ、汗を流しながら 裸で寝ていたとき、汗の流れる感触も気持悪いが、身体をゴキブリが這い回る感触も悪い。

勉君の身体の上を ごそごそ這い回るゴキブリ、その感触で目がさめ、電気を点けた瞬間、散ばり逃げまどう虫、蠢く(うごめく)虫。

その虫を見て驚いた、「スゴーい、こんな大きいの始めてみた」、右往左往しながら散っていく虫を、素手で何とか2匹を捕まえる「やったー」。

やっと捕まえ「いっや〜都会のゲンゴロ大きくて すばやいな〜」と感心しきり。

形も 色も違うゲンゴロウを 歯磨き用のコップに入れ、逃げないように蓋をして 次の朝、店の人に「珍しいゲンゴロいました」と報告していた。

当然、ゲンゴロの正体を知る。

先輩「おまえの部屋、こんなの もっといるのか?」  勉「たっくさんいます」    先輩「…!マスター、たいへんですー」・・・

勉の部屋から モクモク多量の煙が上がる、薫煙殺虫剤を3倍使ったから しばらく部屋の匂いがきつかったようだ。

昔は、青森にゴキブリがほとんどいなかった、近年、各家庭に暖房設備が整い、家の作りも保温性が高まり、越冬しやすい環境に成っている。

青森でも生息域に入っているので だいたいどこの家庭でもゴキブリが確認される。

勉くん 今ではゴキブリを 素手で触れないらしい。

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